2008年06月26日

『ルノワール 幸福の画家』レビュー

Auguste Renoir, 1841-1919, the Painter of Happiness (Taschen Jumbo Series)古本屋でルノワールの画集を見つけました。
輸入版の定価5900円の所、1500円でした。
しかもカバー以外は新品同様。

久しぶりにいい買い物でしたよ。
美術を学ぶ者としては、カバーがボロボロでも中身が綺麗なら問題ありませんからね。

ルノワールの作品が600点も収録されてて、大判の書籍で、印刷も精巧で色彩も綺麗に再現されてて、1500円でいいの!?って感じです(笑)
知らなかった作品とかも載ってて、ルノワールファンとしてはすごく嬉しい1500円。


「色彩の魔術師」と言われるルノワールの作品は、花畑みたいに鮮やかな色彩で描かれていて、暖かみとか温もりに満ち溢れた作品です。
しかも、肖像画を描くのが天才的に上手く、女性画を多く残しているルノワールの描く女性、特に少女は、本当に目の前にいるその人の心が伝わってくるような感覚になるほどに、感情表現がたくみです。

ルネサンスの画家ティツィアーノに影響を受けた色彩と、ラファエロから吸収した構図で、落ち着いた画面でありながら、そこに描かれている人の心が溢れるように伝わってきます。

今まで美術館で観たのを除いては、小さい印刷物でしか観たことがなかったので、この本を買ってからはルノワールの絵に魅了されっぱなしです。

これから古本屋で買いあさって、画集マニアになってしまいそうです(笑)
posted by ぺろ at 00:37| Comment(2) | TrackBack(0) | デザイン系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月17日

『白』原研哉 書評

白グラフィックデザイナーの原研哉さんの著書『白』を読みました。
白という色、白という概念、白という感覚についての考察、エッセーみたいな感じの著作でした。

世界に完全に白いものは存在しない。
必ず白はいくらか汚れている。
でも、完全に白いように思うものがある。
それは周りとの対比で白が際立っているから。

白というのは色という範疇を超えて、概念みたいになっているもの。
本当の白は自然界には存在しないし、誰も見たことがないはず。
ただ、白を感じることはできるし、白だと思うことがある。
見たこともないのに白という概念がある、白は特別な概念なんだと。

白という色の特性には光の足し算としての性質と、色の引き算としての性質がある。
白は色でありながら、色ではない。

何かになる前の状態が白、まだ何にもなっていないのが白。

白の概念は、あらゆるものに広がりを見せていて、不可逆性、一度何かしたら元に戻せないという事が、白の持っている本質ではないか。
だからこそ、白に対するアクション、色を塗るとか、字を書くとか、そういうものは緊張感を伴っている。

それが絵画となり書道となり、人類の文化を発展させてきた。
不可逆性を伴わない白が存在していたら、人類の文化、特に日本の文化はここまでの深みを持つことはなかっただろう。


原研哉さん自ら装丁した本ですが、紙がとても白く見える。
実際に他の本と比べてみたら、実際に白かった。
今まで白だと思っていた紙は、それほど白くなかったみたいです。

表紙から背表紙にかけて書かれた「白」というタイトル。
右端は背表紙なので、表紙側から真直ぐ見ると右端に奥行きが生まれる。
そして、実際真直ぐ見ていることにならないんですが、その白という文字の右端は本の輪郭の右端に接するようで接しない。

その微妙な限りなくゼロに近い感覚、そして単純なようで奥行きが深いというイメージ、それが白なんだというメッセージが込められているんだと思います。

また白は、引き算と足し算の両極にあるものだと書きました。
それをイメージしてるのか、カバーの示す表紙の側から読むと日本語、反対側のページから読むと英語で、最後に真ん中らへんで両方の「本」が終わります。
その最後の極点が白なのか、最初の極点が白なのか。

いろいろ考えさせられる装丁、装丁だけでこんなに考えさせてくれる本です。
単純に色の1つだと思っていた白が想起するあらゆるイメージや感覚、そして思想、文化、歴史、そういうあらゆる多角性に気付かせてくれる本です。

面白かったので、買った日に読み終わっちゃいました。
白
中央公論新社
発売日:2008-05
posted by ぺろ at 13:18| Comment(0) | TrackBack(0) | デザイン系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月16日

伝えるという事

今まで自分が書いた映画レビューを幾つか読み直してみました。

やっぱり「よく書けてるな」って思うものと「全然ダメだな」って思うものがあります。
そういうレビューを読んでいると、何が良いレビューで、何が悪いレビューなのかが見えてきました。

当たり前のことですが、その映画の雰囲気や良さが伝わってくるレビューが良いレビューで、それができていないのが悪いレビューでした。

その単純なことに気付いた時、原研哉さんという日本を代表するグラフィックデザイナーの方の著書『デザインのデザイン』の中で説明されていたことを思い出しました。
グラフィックデザイン(=視覚伝達デザイン)とは、感覚でできた建築を相手の心(か頭)の中に作るものだ、という内容です。

例えば「メロン」を人に伝えるとします。
方法が自由だとしたら、紙にメロンと文字で書く人、メロンに見える絵を描くことで伝える人、味で表現する人、匂いで表現する人、いろいろいるでしょう。

でも、それは「メロンであること」を伝えることしかできていないわけです。
「それ=メロン」という記号的な伝達にすぎないんです。

そのメロンには、味があり、匂いがあり、大きさがあり、重さがあります。
それだけじゃなく網目模様の雰囲気とか、形の妙とか、いろいろ人間は無意識のうちに感じ取っています。

そういう感じ取ってしまう要素を幾つも利用して、伝えたいことを相手の中に構築していくのが視覚伝達デザインです。
メロンであることを伝えるなら、メロンという文字でいいわけです。
でも、メロンらしさというか、「そのメロンを感じる」ためには味とかそういう感覚的なものが想起されなきゃいけない。

映画レビューも同じです、映画に留まらず批評の類は全部同じです。
その映画、その作品が持っている「デザイン」、それから伝わってくるものを違う形、文章と言う形で表現しなければいけないのがレビュー。

考えてみたら、とても難しいことです。
でも、それだけに面白い、やりがいに満ちています。

自分で書いたレビューには、「その映画」が伝わってくるものもあれば、伝わってこないものもあるし、間違った伝わり方をしているものもある。

ふと、原研哉さんの著作を思い出したら、レビューと言うものが何をするべきかを把握できました。
感覚的にレビューと言うものは、どうすればいいのかがわかった気がしています。

これから、ただ観た映画の感想を述べるだけじゃなく、「その映画」が伝わるようなレビューを書きたいと思いました。

難しいことけど、それだけに面白い。

人間、何事も精進ですね。
たかがブログですが、そこに自分の成長のきっかけが眠っていました。

グラフィックデザインを志す僕としては、言葉というメディアの違いはありますが、伝える能力を向上させることは自分を高めることに繋がるでしょう。

精進、精進。
デザインのデザイン
岩波書店
発売日:2003-10-22
おすすめ度:4.5
posted by ぺろ at 02:17| Comment(0) | TrackBack(0) | デザイン系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月26日

eneloop solar charger

SANYO ソーラー充電器セット 「eneloop solar charger」 N-SC1S三洋電機のeneloop universeに新しいプロダクトが増えましたね。

その名も、ソーラーチャージャー。
太陽光で発電してeneloopに充電できるという充電器です。

しかも、すごいのは、充電器に内蔵されたリチウムイオン電池に自動的に充電されているので、太陽光による発電から直接eneloopに充電する必要が無く、内蔵電池に充電された電気をeneloopに高速充電できるという機能。

eneloop universeとしてもすごいですが、普通の充電器としても画期的な機能です。
考えてみたら単純な必要性なのに、今までなかったのが不思議です。
ソーラーパネルと充電コードだけなのが今までの太陽光充電器でしたけど、これは内蔵電池があるお陰で時間や天気を気にすることなく充電することができる。

更にこの充電器のすごいのは、USBポートが付いていること。
USB対応の電気製品は全部使えるわけですね。

iPodとか、ウォークマンとか、携帯も充電できますし、デスクライトとかにも使える。
そういえば、デスクファンなんて卓上扇風機がありましたね、もちろんそれも使えますね(笑)

すごいユーティリティ。
ほれぼれするほどの機能性。
デザインに携わったデザイナーさんや、エンジニアの方、全ての方を尊敬してしまいます。

これは今、一番単純に快適性を失わずに消費電力を減らす方法じゃないでしょうか。
暑いけどクーラーの温度を下げるのを我慢するようなエコも絶対に必要なことですけど、これに関しては何も失うものがない。
これを買うための初期投資だけですが、地球のことと電気代のことを考えたら安いもんですよ。

でもまぁ、電気代はそんな大幅に変化しないでしょうから、地球のための投資ですね。

今度バイト代が多く入る月に買おうと思います。

ヴェネツィアが無くならないように。
タヒチが沈まないように。
白熊が絶滅しないように。
そして僕らの次の世代に、美しい地球を残すために。

学生の僕はこれが初めてエコのためにする投資です。
SANYO ソーラー充電器セット 「eneloop solar charger」 N-SC1S
三洋電機
おすすめ度:5.0
おすすめ度5 すばらしい
おすすめ度5 空に太陽がある限り。
おすすめ度5 使いやすい
おすすめ度4 発想とデザインはよい。能力はいまいち。
posted by ぺろ at 03:27| Comment(0) | TrackBack(0) | デザイン系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月12日

書評:深澤直人『デザインの輪郭』

デザインの輪郭僕は深澤直人さんというデザイナーが好きなのです。
好きというか、尊敬しているというか。

今、日本で一番「売れている」デザイナーは佐藤可士和さんでしょう。
ホンダのステップワゴンのCMに始まり、UT(ユニクロのTシャツブランド)やTポイント、四角いカラフルな携帯電話(名前忘れました)などなど、そこかしこでヒットを飛ばしているデザイナーです。

どんだけ儲かってんのかわかりませんが、そんな佐藤さんよりも深澤さんの方を僕は尊敬しています。

まぁ、博報堂出身で商業デザインを主に手がけている佐藤さんと、プロダクトデザインを中心にしている深澤さんを比べるのもどうかと思いますが。


深澤さんがデザインしたものとして有名なのはドーナツ型の加湿器
他にもたくさんありますが、無印良品が出した壁掛け式のCDプレーヤーなんかも有名です。

無印良品のボードメンバー(リーダーみたいな人たち)の一員でもあります。


そんな深澤直人さんが書いた本が『デザインの輪郭』。
品格じゃなくて輪郭。

「デザインとは何か?」という問いに明確な答えを与えてくれない一冊です。

この本によるとデザインとは、
・いわゆる一般的イメージで言うところの「デザイン」ではない
・「+α」でも「−α」でもない
・理屈ではいいデザインは生まれない
・言葉にしようと思うともやもやしてるけど、感覚の上ではとても明確なもの
云々…

なんとなく分かるけど、なんとなくハッキリしない「デザインとは〜だ」を提示してくれる内容です。

深澤さん自身、デザインが何であるのかを説明できるかどうかよりも、「デザイナーとはこうあるべきではないのか?」と日頃思っていることを綴ったような内容です。

エッセー集みたいな構成になっているので、デザイン論ではない。


この本を読んで、元々好きだった深澤さんを尊敬するようになりました。

デザインは人間に合わせて作るものではあるけど、「自然な人間」が歪んでしまっている現代の特に日本、特に東京などの都会に住む人たちは、間違ったデザインを求めているように漠然と思っていましたが、その違和感に結構明確な説明を与えてくれました。

人間が自然にすること、自然にしてること、そういうことにデザインは合わせていくべきであって、人が「求めているもの」や人が「欲しいと思うもの」に合わせていくものではないということです。

奇抜さや「新しさ」や「個性」やら、そういう要素を付加されたものを「デザイン」と呼んだりしている社会は、本当のデザインというものをわかっていない。
本当のデザインは、奇抜でもなく、新しくもなく、遍く全員に合ったものであるはずなんです。

でも、今までそういう「普通」がなかった。

だから今、無印良品のように、「これでいい」を「これがいい」にしていくれるデザインが静かに人気なわけです。
人は無意識に「普通」を求めているんですよ、多分。


優れたデザイナーほど、自分が表に出ない、つまり過剰な個性を演出しないものです。

昨日か一昨日、NHKで綾小路竹千代さんという原宿で美容師をしている方をクローズアップした番組を見ました。
優れたヘアデザイナーであるはずの綾小路さんは、プロである自分ではなく、素人であるお客さんが、自分で自分を輝かせ続けられるカットを心がけているというようなことを言っていました。

家に帰ってからも自分で整えられるように髪を切る。
その人その人それぞれの美しさ、かっこよさ、可愛さなどの個性を出せる髪型にする。
それがプロの美容師である自分の仕事だと。

「プロである自分が作る美」ではなく、すでに備わっているその人自身の美を引き出して、素人であるその人がその美を保てることが理想。
美を作るのではなく、既にある美を引き出す、それが美容師だと。


アートを「自分を表現するもの」だと考える風潮が大嫌いな僕は、客観を写生することが芸術だと信じてきました。

深澤さんの言葉を目で追っていくにつれて、その考えが間違ってはいない、少なくとも深澤さんのデザインは、僕の考えがひとまず間違ってはいないことを証明してくれるものだと思いました。

一般的なデザインのイメージとは違う、「デザインの真の目的」を紐解く道しるべとなってくれる本でした。

僕のようなデザインや芸術を志す人間にとっては必読の一冊だと思います。
デザインの輪郭
TOTO出版
深澤 直人(著)
発売日:2005-11
おすすめ度:4.5

posted by ぺろ at 02:36| Comment(0) | TrackBack(2) | デザイン系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする