
僕は深澤直人さんというデザイナーが好きなのです。
好きというか、尊敬しているというか。
今、日本で一番「売れている」デザイナーは佐藤可士和さんでしょう。
ホンダのステップワゴンのCMに始まり、UT(ユニクロのTシャツブランド)やTポイント、四角いカラフルな携帯電話(名前忘れました)などなど、そこかしこでヒットを飛ばしているデザイナーです。
どんだけ儲かってんのかわかりませんが、そんな佐藤さんよりも深澤さんの方を僕は尊敬しています。
まぁ、博報堂出身で商業デザインを主に手がけている佐藤さんと、プロダクトデザインを中心にしている深澤さんを比べるのもどうかと思いますが。
深澤さんがデザインしたものとして有名なのは
ドーナツ型の加湿器。
他にもたくさんありますが、無印良品が出した
壁掛け式のCDプレーヤーなんかも有名です。
無印良品のボードメンバー(リーダーみたいな人たち)の一員でもあります。
そんな深澤直人さんが書いた本が『デザインの輪郭』。
品格じゃなくて輪郭。
「デザインとは何か?」という問いに明確な答えを与えてくれない一冊です。
この本によるとデザインとは、
・いわゆる一般的イメージで言うところの「デザイン」ではない
・「+α」でも「−α」でもない
・理屈ではいいデザインは生まれない
・言葉にしようと思うともやもやしてるけど、感覚の上ではとても明確なもの
云々…
なんとなく分かるけど、なんとなくハッキリしない「デザインとは〜だ」を提示してくれる内容です。
深澤さん自身、デザインが何であるのかを説明できるかどうかよりも、「デザイナーとはこうあるべきではないのか?」と日頃思っていることを綴ったような内容です。
エッセー集みたいな構成になっているので、デザイン論ではない。
この本を読んで、元々好きだった深澤さんを尊敬するようになりました。
デザインは人間に合わせて作るものではあるけど、「自然な人間」が歪んでしまっている現代の特に日本、特に東京などの都会に住む人たちは、間違ったデザインを求めているように漠然と思っていましたが、その違和感に結構明確な説明を与えてくれました。
人間が自然にすること、自然にしてること、そういうことにデザインは合わせていくべきであって、人が「求めているもの」や人が「欲しいと思うもの」に合わせていくものではないということです。
奇抜さや「新しさ」や「個性」やら、そういう要素を付加されたものを「デザイン」と呼んだりしている社会は、本当のデザインというものをわかっていない。
本当のデザインは、奇抜でもなく、新しくもなく、遍く全員に合ったものであるはずなんです。
でも、今までそういう「普通」がなかった。
だから今、無印良品のように、「これでいい」を「これがいい」にしていくれるデザインが静かに人気なわけです。
人は無意識に「普通」を求めているんですよ、多分。
優れたデザイナーほど、自分が表に出ない、つまり過剰な個性を演出しないものです。
昨日か一昨日、NHKで綾小路竹千代さんという原宿で美容師をしている方をクローズアップした番組を見ました。
優れたヘアデザイナーであるはずの綾小路さんは、プロである自分ではなく、素人であるお客さんが、自分で自分を輝かせ続けられるカットを心がけているというようなことを言っていました。
家に帰ってからも自分で整えられるように髪を切る。
その人その人それぞれの美しさ、かっこよさ、可愛さなどの個性を出せる髪型にする。
それがプロの美容師である自分の仕事だと。
「プロである自分が作る美」ではなく、すでに備わっているその人自身の美を引き出して、素人であるその人がその美を保てることが理想。
美を作るのではなく、既にある美を引き出す、それが美容師だと。
アートを「自分を表現するもの」だと考える風潮が大嫌いな僕は、客観を写生することが芸術だと信じてきました。
深澤さんの言葉を目で追っていくにつれて、その考えが間違ってはいない、少なくとも深澤さんのデザインは、僕の考えがひとまず間違ってはいないことを証明してくれるものだと思いました。
一般的なデザインのイメージとは違う、「デザインの真の目的」を紐解く道しるべとなってくれる本でした。
僕のようなデザインや芸術を志す人間にとっては必読の一冊だと思います。
TOTO出版
深澤 直人(著)
発売日:2005-11
おすすめ度:
