2008年02月14日

『天然コケッコー』 映画レビュー

天然コケッコー 特別版 (初回限定生産2枚組)タレントの夏帆が映画賞で新人賞を獲った作品『天然コケッコー』を観ました。

最近観た映画の中で一番好きかも知れない。
何回観ても楽しめそうな映画に出会ったのは久しぶり。
ジョニー・デップの『ネバーランド』以来かな。

ストーリーとか、映像とか、大事な要素は何か?って言われたら1つには絞れないけど、一番この映画で印象的だったのは何か?って聞かれたら、「夏帆の演技」って答えます。

主人公の右田そよが何を感じて何を考えているのか、直接言葉で表現してなくても夏帆の表情とか仕草とか声音から全部伝わってくる。
夏帆の演技は「みずみずしい」って言葉が一番合ってるかな、本当に夏帆が右田そよなのかと思ってしまう程に役と役者が溶け込んでる。


昔、中学の時に現代文の先生が「主人公というのは、話の最初と最後で大きな心境の変化を迎える人のこと」だって言っていました。

今その言葉を思い起こすと、主人公の元々持っていた価値観が別の新しい価値観に代わるっていうことで、作者が伝えたいことを体現しているのが主人公だということなんだと思います。
その作品を観る人、読む人、聴く人は、そういう変化を迎える登場人物を通して作者の言いたいことを感じ取る、だからそれが主人公なんだと思います。

『天然コケッコー』の中で心境の変化、価値観の変化を迎えるのは、夏帆が演じるそよではなく岡田将生が演じる大沢。

大沢という「東京の人間」が、木村町の「田舎の生活」に入っていく。
心は東京人のままただ東京から田舎に移動しただけの大沢は、そよと出会うことで心も木村町の人間になっていく。

はじめは、そよの方が大沢の「東京の心」に近付こうとがんばってみるけど、そよにはそれができなくて、代わりに大沢がそよの「田舎の心」に近付いていく。

僕が教わった中学時代の先生によれば、主人公は大沢になるんだと一応は思った。

でも、これは、観る人によって違うとも思う。
僕は男で、しかも東京人で、(ルックスはさておき)この作品の登場人物の中で一番価値観が近く感じるのは大沢です。
「どこに買い物行くの?」とか、「下級生の面倒を見なくて済む」とか、「学校が無くなっても気にならない」とか考えてる大沢と同じことを考えてます。

だから、僕にとって主人公は大沢です。
都会に住む僕はこの作品で、そよの暮らす田舎の生活と出会って、そよの心とか生活とか、そよ自身に魅かれていくわけですから。

でも、田舎に住む人にとっては、この映画で逆に大沢という都会人に出会って、そよみたいに大沢の心とか生活とか、大沢自身に魅かれていくかもしれません。
東京人なんで、本当にそうかわかりませんけど。

かと言って、東京に住む女の子からしたら恋心に都会も田舎も関係ないから、自分とは違う環境で生きてきた大沢に出会うそよの気持ちが一番魅力的で、そよと一緒に恋を楽しんでいるのかもしれません。

話がゴチャゴチャしてきちゃいましたが、人それぞれの楽しみ方がある映画だと思いました。
僕の場合は自分に一番近い価値観を持つのが大沢であったように、他の人が見たら違う誰かがその人の主人公になるかもしれません。

でも、誰が観ても、そよが一番「大切」に思えると思います。
そよの心だけは、見てる誰もが傷つけたくないと思うんじゃないかなぁと。

大沢と価値観が近くても、僕はそよの初恋を応援する気持ちで観ていました。
夏帆の演技が本当に素晴らしくて、実際にそよの恋を生で観ているような気持ちになります。


家でこの映画を観た後、新宿に出かけたんですが、なんとなくそよの気持ちになって東京の街を見てしまいました。

町の皆が知り合いの木村町と違って、東京にいる人はほとんど他人。
名前も、歳も、住んでるところも知らないし、今どこに行こうとしているのかもわからない。
話しもないし、視線を合わせることもない。

でも東京の人には、東京が自分の街なんですよね。
ほとんど赤の他人であるはずのこの街が自分の街。
考えてみたら変な感じがします。

そよが木村町で「山の声」を聞いていたように、そよは東京でも「街の声」を聞くことができた。
人は人との繋がりだけじゃなくて、その場所との繋がりも持っているんでしょうね。

東京にいる人は他人でも、東京という街は自分と共にある。
共にあるというか、自分の心の中にあるのかもしれません。

そよが大沢の故郷である東京の声を聞いて東京を好きになれる気がしたように、どこかで人知れず大沢も木村町の声を聞いたんだと思いました。
聞こえていた声に耳を塞いでいた自分がいたけど、そよと一緒にいたいという気持ちがその声に耳を傾けるキッカケになって、大沢の心の中でも木村町が大きな場所を占めるようになったんだと思います。


そんな全部が、そよと大沢が出会ったことで始まった。
出会いって大切なんだなと改めて気付かされました。

そよが大沢と出会って初めて恋をした事から、2人の人生が変わっていく。
東京に戻りたかった大沢も、段々そよと別れたくない自分に気付く。

初恋って、何もかもが永遠のものに感じますよね。
永遠に好きでいられる気がしたり。
別れる時は二度と永遠に会うことができないと思ったり。
ずっと一緒にいたいって心の底から思えたり。

そんな昔の気持ちを思い出しました。

それも、この映画に出会ったことから始まったことですね。
いい映画に出会えてよかったと思います。
天然コケッコー 特別版 (初回限定生産2枚組)
角川エンタテインメント
夏帆.岡田将生.夏川結衣.佐藤浩市.柳英里沙.藤村聖子(俳優)山下敦弘(監督)
発売日:2007-12-21
おすすめ度:4.5
posted by ぺろ at 19:20| Comment(2) | TrackBack(6) | 映画・映像作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
TBありがとうございました。
この作品は公開時に見逃したままで、ぜひとも観たいと思っているところでした。
こちらでレビューを読ませていただいて、益々その思いが強くなりました。
Posted by hyoutan2005 at 2008年02月17日 15:24
はじめまして、コメントありがとうございます!!
とてもいい映画なので、ぜひ観てください。
すーっと心が綺麗になる感じがします。
Posted by ぺろ at 2008年02月18日 14:55
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