2008年04月27日

『不都合な真実』映画レビュー

不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディションこの映画は、ドキュメンタリー映画だと思ってたんですけど、観てみたら全然違いました。
ドキュメンタリーだと言えばドキュメンタリーですけど、イメージしてるのとは違います。

アル・ゴアによる大学の講義を記録して、いくつかの映像やコメント、伝記的要素を追加したような構成。

実際にアル・ゴアがアメリカ中、世界中でやっている講演をスタジオで映画用に撮影したようなものです。
だから、内容は一言で言えば「ゴアが喋り続ける」って感じ。

でも、その講演の内容は素晴らしい。
彼の訴えの正当性は認めなければいけない。
楽しい映画ではないけど、これは21世紀の世界を担う僕らは観なければいけないと思う。

アメリカ的なレトリックや、アメリカ的な浅い笑いの要素はイラっとするし、地球温暖化の最大の原因でありながら最も無関心でいるアメリカ国民に向けての講演だから、日本人やEU圏の人が見るとアメリカが悪いような多少してしまうけど、それはこらえなければいけない。

世界でCO2を多く排出している4つの地域のうちに、日本は入っています。
だんとつで多いアメリカ、残り3つは同じ程度。
ですけど、その3つはEUとロシアと日本。
小さい日本がたった1国で、EUとロシアに肩を並べてしまっている。

日本は自動車や電化製品の開発では、世界でトップを独走する省エネ大国ですけど、同時に多くのCO2を排出する国でもある。
中国は農村部の人口で割るから小さく見えるだけですけど、実際は石炭の消費量を考えたら日本よりは排出しているかもしれないけど、日本は中国よりも先に発展できた国だから、中国と比べてはいけない。
むしろ、これまでに日本が排出してきたCO2を考えたら、今の中国が排出するCO2を全てイーブンにできるくらいの努力をしなければいけないと思う。

それくらいの覚悟をしなければいけない。


僕は一度カナダに旅行したことがあります。
そこで、ロッキー山脈にあるコロンビア大氷河という氷河を見ました。
世界有数の大氷河で、端っこにだけ人が降り立つことが許されているんですけど、そこからみえるのはほんの一部。

氷河の全貌というか、メインとなる場所すら見えないほどの大きさでした。

でも、そこに行く途中、何年か前まではここから氷河だったという場所を教えられた時にそれが信じられませんでした。
そこから氷河まではまだまだ距離があったからです。
遠すぎて、逆に地球温暖化の影響を実感することができませんでした。
信じられなさすぎて、空想的な響きを残しただけでした。

でも、この映画を観て、その空想的な響きが突然現実のものとして反響して、あの氷河が失われてしまったことを実感しました。

温暖化は、確実に進んでいて、しかも加速している。
先進国に生きる人間は、幸い自分の生命維持に努力する必要がない。
アフリカの貧しい人たちに温暖化防止のための活動を求めるわけにはいかないし、今発展しようとしている最中の中国やブラジルにそれを強いるのも無理な話。

現実的に考えて、先進諸国が努力するべきであって、それが一番の課題。
国としての努力、特に日本だと企業としての努力に頼りすぎだけど、個人が努力できることもある。

僕たちは地球を守るために具体的な行動をしなきゃいけない。
不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディション
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
ドキュメンタリー映画(俳優)アル・ゴア(俳優)デイビス・グッゲンハイム(監督)
発売日:2007-07-06
おすすめ度:4.5


ゴアが書いた著作の方↓
不都合な真実
ランダムハウス講談社
アル・ゴア(著)枝廣 淳子(翻訳)
発売日:2007-01-06
おすすめ度:4.5
posted by ぺろ at 16:22| Comment(3) | TrackBack(7) | 映画・映像作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月26日

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』映画レビュー

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 特装版ネットで予約していたので、発売日に届きました。
アマゾンとか楽天だと26%OFFでした。

ネットを使えない人は、使える人に比べて不利な生活を強いられてるのかもしれないと思いました。
本人は気付かないので、知らぬが仏って感じでもありますけどね。


僕はアニメ版は1回しか観たことがないので、細かいことは覚えていませんでした。
だから、何話分もある話を1時間半に詰め込んであるらしい今回の新劇場版の序を見ても、どこが削られてるのかサッパリでした(笑)

感想は、とにかく面白い。

新劇場版:序にはサブタイトルがついています。
「You are (not) alone」と。

使徒(敵)とエヴァンゲリオンが持っている他者と強力に隔絶された境界「ATフィールド」というのが、自己の領域とでも言うもの。
そこまでが自分であって、そこから外界であるようなものです。

それは、エヴァや使徒だけじゃなく、人間はもちろん全ての存在が持っているその存在自身が他の存在と区別している境界を象徴的に表していると僕は思っています。

そのATフィールドによって、自我は他者の中に存在することができないわけです。
だから、全ての自我は本質的に「You are alone」ということです。

でも、実際に人間はお互いに何らかの絆で繋がっていて、お互いの欠けているもの失ったものを補完し合いながら共存している。
だから、「You are alone」であると同時に「You are not alone」ということです。

碇シンジという14歳の少年は運命に選ばれて自分の意思とは裏腹に危険の中に身を投じて戦うことになる。

「自分の望み」は必ずしも排他的に叶うことはない。
人間にはそれぞれ与えられた命があり、体があり、精神があり、他者との繋がりがあり、運命がある。
それが、それぞれの人間を拘束して完全な意味での自由を奪う。

孤独であるはずの個人が、外界から拘束されてしまう。
運命は自分で決めることはできない。
けど、その運命の中でどうするかは自分が決めなければいけない。

シンジにエヴァ初号機パイロットという運命を与えた特務機関ネルフは命令を下し、彼の戦いを援護し支援することしかしない。
実際に碇シンジが戦うかどうかは、碇シンジという個人の意思に委ねられている。


アニメの歴史の中で受け継がれてきたヒーロー像を正反対に覆した作品です。

人々を助け、守り、導いてくれる存在であったヒーロー。
そんな「強い正義の味方」が従来のヒーローでした。

でも、シンジは完全にその逆。
弱く、周りに助けられ、守られ、導かれて、何が正義かも分からず悩み続けるまま、得体の知れない敵と、得体の知れない兵器で戦う。

最後の頼みである強いヒーローではなく、弱くて頼りないけどシンジじゃなければいけない。
運命に選ばれたエヴァ初号機のパイロットは碇シンジ以外にいないから。


個人的に、エヴァの代名詞にもなった、真っ黒の背景に真っ白の極太ゴシックの文字が浮かぶあの演出をもっと使って欲しかったです。
あれこそ、エヴァがただのアニメ(動く絵)ではないことを思い知らせてくれたのに。

それだけ心残り。
でも、今回のエヴァには文字による表現は似つかわしくないのはわかります。
完全に映像でストーリーを再構築していくつもりなんだと思います。

最後の最後、旧作では心理学の論文を朗読してるみたいな感じだったあの部分はどうなるんだろう。
今からすごい楽しみです。


エヴァンゲリオンは、自己、自我、自分、それがどう在るのかを問う深い話です。
ただのロボットアニメじゃありません。

ちなみに、この作品の庵野監督の師匠は、宮崎駿だそうです。
「風の谷のナウシカ」で巨神兵のシーンを作ったのがこの庵野監督。
上手すぎて、宮崎駿が何の手直しもできなかったとか。

最後の最後に余談ですけどね(笑)
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 特装版
キングレコード
三石琴乃(俳優)林原めぐみ(俳優)立木文彦(俳優)緒方恵美(俳優)山口由里子(俳優)総監督:庵野秀明;監督:摩砂雪;監督:鶴巻和哉(監督)
発売日:2008-04-25
おすすめ度:4.5


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 通常版
キングレコード
三石琴乃(俳優)林原めぐみ(俳優)緒方恵美(俳優)山口由里子(俳優)立木文彦(俳優)総監督:庵野秀明;監督:摩砂雪;監督:鶴巻和哉(監督)
発売日:2008-05-21
おすすめ度:3.5
posted by ぺろ at 03:07| Comment(0) | TrackBack(3) | 映画・映像作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月23日

aiko『秘密』レビュー

秘密aikoの最新アルバム『秘密』をゲットしました!!
シングルの『二人』『シアワセ』『横顔』などが収録されています。

aikoって「気持ちがバレないように隠してる」って歌詞が多い気がしますけど、このアルバムはいつもより更にそれが多いというか強いというか。
タイトルどおり秘密の感情を歌った曲が多くて、男としては「女の子ってこんなことを考えてるんだ」って思うことも多かったり。


僕はシングルの『二人』と『シアワセ』がこのアルバムで一番好きです。
って2つあったら一番じゃないですね(笑)

aikoの音楽の感想って、上手く言葉にできません。
ただ「好き」な音楽って感じ。
こうだから好きとか、こういう所が好きとかいう理屈がないです。

歌詞の主人公の恋を応援したくなったり、こんな風に想われてたら幸せだなぁとか思ったり。
aikoの声も好きだし、歌詞も好きだし、音楽も好きだし、aikoも好きだし。
何もかも「好き」っていう言葉が一番しっくりくる感想。

PVも可愛くて好きです。
『ウタウイヌ』全部欲しいなぁ。
『Love Like Rock』のDVDも全部欲しいです。

aikoは音楽だけじゃなく、PVとか、ファッションとか、ライフスタイルとか、全部ひっくるめて「aiko」っていうジャンルになってる感じがするくらい自分の価値観があって、分野は違えど同じ芸術的な方面を志す人間としても尊敬です。

女性としても可愛くて魅力的だし。
もう30過ぎてるとは思えない(笑)


最近、このアルバムばっかり聴いてます。
すごい好きだから。
今までのaikoのアルバムで一番好きかもしれないです。
秘密
PONYCANYON INC.(PC)(M)
aiko(アーティスト)
発売日:2008-04-02
おすすめ度:5.0
posted by ぺろ at 20:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月20日

『Hallelujah』の一部 心に響いた言葉

ある時は僕の存在が君の無限大の可能性を奪うだろう
例えば理想的な もっと官能的な恋を見送ったりして
だけど これだけはずっと承知していてくれ
僕は君を不幸にはしない
―――from "Hallelujah", by Mr.Children
Q
posted by ぺろ at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 心に響いた言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「銀河鉄道の夜」宮沢賢治

新編銀河鉄道の夜宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がどんな話だったか思い出せなくて、久しぶりに読んで見ました。

ふと思い出そうとしてみても、主人公がジョバンニで、カムパネルラというクラスメイトと一緒に不思議な銀河鉄道に乗って夜空を旅するという漠然とした記憶だけしか思い出せませんでした。


この話は宮沢賢治の童話の中で、彼が何を言いたいのかわからない謎の多い童話だと国語の授業で聴いた覚えがありました。

読んでみても、やっぱり何が言いたいのかはわからない。
もしかしたら、宮沢賢治は何を言いたいわけでもないのかもしれないと思うほどです。

でも、僕はその「何を言いたいわけでもない」というのが、あながち間違いではないような気がします。

彼の本職は、農村の生活向上のために働く活動家でした。
晩年、病に臥せって、自分の空想を全て吐き出すように書き残したのが、数々の童話だと聞いています。

「春と修羅」と「注文の多い料理店」は生前に刊行されたみたいなので、詩人や童話作家と一応言うこともできますけど、たった2作で文筆家が本職だとは言い切れないと思います。


何を言いたいわけでもない。
ただ、この話そのものが彼の言いたいことだったんじゃないか。

夜空を走る鉄道という神秘的で幻想的な空想が、彼の描きたかった浪漫なんじゃないか。

専門家に言わせるとどうなのかわかりませんが、僕はそう思います。
その不思議な感覚、思いついた不思議なストーリーを彼は原稿にして残そうと思ったんじゃないか。

「銀河鉄道の夜」は、一部文章や原稿が欠落していて、未完の作品です。
この空想を書き留めて、いつか完全な作品にするための試作品として書いたんじゃないかと思わせるところがあります。

いくつものモチーフが無造作に織り込まれ、その無造作な脈絡が不思議な感覚を助長しているところもありますが、多分、宮沢賢治はもっと深い意味を持った童話へと作り上げたかったんじゃないかと感じました。

紙に書きとめられていない彼の頭の中にしかない「未完の空想」がたくさんある気がしてならない。
そのたくさんある空想をひとつに結ぶのが銀河鉄道だという、完成予想図が今残っている「銀河鉄道の夜」であって、まだこれは素直で直接的な空想なんだと思います。

ここにもっと意味をつけたかった。
未完で終わってしまったことが悔やまれます。

宮沢賢治の空想の世界を銀河鉄道が案内してくれるような作品が、もしかしたらできていたかもしれないのに。。。
新編銀河鉄道の夜
新潮社
宮沢 賢治(著)
発売日:1989-06
おすすめ度:5.0
posted by ぺろ at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月13日

浦沢直樹『MONSTER』

Monster (1) (ビッグコミックス)浦沢直樹さんの『MONSTER』を最近初めて読みました。
手塚治虫を尊敬する浦沢直樹さんらしい、命とか生きることを「記憶」をテーマに壮大なミステリーに仕立て上げた作品。

人が生きる上で「記憶」がもたらす影響は計り知れない。
自分という存在を、自分に対して証明できるものは記憶以外にない。
記憶がない状態で、「あなたはこういう人間です」といくら論理的な証拠を持ってこられても、多分誰も「あぁ、自分はこういう人間なのか」と納得できる人はいないと思う。

「自分=記憶」と言ってもいいほど。

ただ、その「記憶」が認めたくない自分の価値を思い起こすものだとしたら、人はどうするだろう。
自分の存在を誰も望んでくれないとしたら、人は生きる意志を保てるだろうか。
果ては、自分の存在の痕跡すら残すことを拒むんじゃないか。

ある人の存在を証明するためには、他人による証明が必要。
もしくは物証とか、証明される本人以外のものが必要。

ヨハンという人物と、テンマ博士という人物が同一人物ではないという証明は、テンマ博士の告白からは成り立たない。
物証、もしくは他の信頼できる人物からの証言が得られなければ、その他人性を証明することはできない。

記憶や記録という、存在の痕跡をテーマにして、生きることを考えるこの作品は奥が深い。
複雑で魅力的なストーリーも、好感が持てる登場人物も、絶対悪と呼ばれる青年の中で眠ってしまった生きたいという気持ちへの共感と繋がっている。

自分と言う存在が望まれたものなのか、望まれなかったものなのか、その疑問が論理的に解けて納得できることは多分絶対にない。
ただそれを信じさせてくれる記憶があれば、その疑問に対する解は必要ない。

「自分は望まれた存在」、「自分は望まれなかった存在」。

どっちかわからなくさせる記憶が、自分の中に眠っていたら。
その忘れていた記憶を何かのきっかけで思い出してしまったら。

人はどうするか。
自分はどうするか。
ヨハンはどうするか。

自分と言う存在自体が、孤独の感情に直結するような記憶を持ってしまったら人は「完全な自殺」を求めるのかもしれない。
自分ももしかしたらそうしたかもしれないし、自分と言う存在をこの世界から完全に消滅させたいと思うほどの感情を持ったことがある人は少なくないんじゃないか。

テンマ博士が悩み続けた「自分があの怪物を蘇らせてしまった」という苦悩は、本当は存在してはいけない。
誰の存在でも、「望まれない」ことはあってはいけない。
存在した時点で、全ての存在は望まれていなければいけない。
周りはそれを信じてもらえるようにしなければいけない。

絶望して、自分の価値を自分で制限してしまうことはない。
自分の価値は他人の中にしか生まれない。
自分がいる限り、他人の中に自分が存在する価値を与えることはできる。

そのために、生きなければいけない。
Monster (1) (ビッグコミックス)
小学館
浦沢 直樹(著)
発売日:1995-06
おすすめ度:4.5
posted by ぺろ at 14:58| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする